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『ザ・フェミニズム』をマトモに読む第8回目。今回は、政治経済思想史や経済史をやったことがある人ならわかる基本的な話だとは思うのですが、要するに、リベラリズムはフェミニズムの敵である、という話です。

ザ・フェミニズム (ちくま文庫)
ザ・フェミニズム (ちくま文庫)上野 千鶴子 小倉 千加子

おすすめ平均
starsもやもやがちょっと解消しました。
stars興味深いけれど
stars対談のいいところが出ている
starsどつき漫才で学ぶフェミニズム
starsフェミへの距離が縮まる

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最初に、背景を簡単にまとめますと、戦後、日本という国は、ずっ~~と、「日本型社会主義」をやってきたワケです。国としては、官が各省庁の縄張りに割拠し、規制や保護によって民間企業の経済活動を管理し、中央から地方への再分配をコントロールしてきました。

企業単位では、終身雇用、年功序列という封建制度によって男性従業員を束縛し働かせ、日本独特の会社主義を行ってきました。そして、この会社主義によって、男性従業員は会社に奴隷化されたのですが、一方、男性従業員の妻となった女性は家庭に奴隷化されました。そして、この女性に焦点を当てたのがフェミニズム思想であったわけです。

そして、官が護持する社会主義に、企業の会社主義を加えたものが、「日本型社会主義」(またの名を日本型資本主義)と呼ばれているシステムであり、2008年現在においても、変化の兆しは微かに見えるものの、まだまだ続いております。

詳しくは、古い本ですけど、基本形は変化していないので、こちらなどがオススメ。
七つの資本主義―現代企業の比較経営論
七つの資本主義―現代企業の比較経営論C・ハムデン‐ターナー A・トロンペナールス 上原 一男 若田部 昌澄


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ということで、現状として、このようなシステムによって成り立っている国なのですから、上野千鶴子さんや小倉千加子さんが「リベラリズムはフェミニズムの敵」「フェミニズムと議会制民主主義は相容れない」(p240)と主張するのは至極当然なことなのです。が、

小倉:だからそのへんの誤解が世間にはある。いわゆる「間接民主制を通して法律を変えて、女性の地位を向上させよう」というようなことを真面目に信じている人がいるからね。ちゃんちゃらおかしい。

上野:そりゃいえます。運動論的に言うたら代議制民主主義というもんほど、フェミニズムと関係ないもんありませんなあ。

小倉:うん。でもそれを知らない人がたくさんいるんですよね。(p36)


とのことでして、もしかするとまだまだ一般知にはなっていない可能性があるため、以下、引用しつつまとめ。
まず、リベラル・フェミニズムとは何か、というと、この小倉さんの発言が一番わかりやすいかも。

小倉:私に言わせれば、リベラル・フェミニズムとは改革の皮をかぶった保守派、です。(p254)


お二人は「リベラリズムは改良主義だ」(p249)という点でも意見が一致している。ここで「改良主義」とは、

上野:(略)改良主義とは何かと言うと、世の中の枠組みを壊さないということ。一番わかりやすいリベラル・フェミニストの目標は、過少代表性を改善しようということです。

つまり、世の中のありとあらゆる分野で女性の数が人口比よりもはるかに少ないから、女の人口比に見合った代表数を持とう、ということなんです。だから国会議員の半数を女性に。

これが一番わかりやすい、単純な人々に受け入れられやすいタイプのリベラル・フェミニズムです。目標が非常にはっきりしているし、わかりやすいし、数値目標が出る。今、日本の国策フェミニズムがリベラル・フェミニズムですね。(p250)



そして、リベラリズム路線の「問題」は何か、というと、こちら。以下、2箇所から引用。

上野:(略)そのリベラル・フェミニズムが、税制・年金制度の世帯単位から個人単位化を主張し、さらに個人主義が徹底していけば、自己決定・自己責任となる。小泉改革の先にあるのはそれですよ。
(p250)



上野:福祉国家のフェミニズムでしょう?国策フェミニズムの行き着く先はそこです。福祉国家は分配平等を求める思想ですけれど、分配平等には原資が限られていて、一定の集団の中でしか実現しない。となれば、排外主義に結びつきます。

具体的に言うと、難民排除、外国人排除、国籍条項の厳格化、これしかシナリオがないですよ。その道を選ぶ人たちもフェミニストの中に出てくるでしょう。


もっとも彼らは、その選択に排外主義やナショナリズムが結びついているとは自覚していないでしょう。もっとナイーブで善意の人たちだろうから。

小倉:それは福祉国家の宿命です。(p281-282)


とのことで、お二人とも政治思想がどういった問題を引き起こすのかを十分に理解しているという点がわかります。現状においても、リベラリズムが何かも知らない「ナイーブで善意の人たち」が、なんちゃってリベラルを気取ってしまっているがゆえに、おかしな方向へ行ってしまっている、というような場合って、けっこうありますし、まあ、そういう人たちは、ご自分達の頭の悪さを示してしまっていることにさえ気づいていないのでしょうけれど、そろそろ、自覚して頂けると有難いな、と思ったりします、はい。

なお、フェミニズムやリベラリズム云々という思想の問題とは異なる次元で、「税制・年金制度の世帯単位から個人単位化」は、実施しなければならない政策です。また、反対する方はいないでしょうし、誰も反対する根拠はないでしょう。なので、早めにやってしまったほうが後々楽だと思います、はい。

お二人の違いが現れているのはココかも。上野さんは、現状を見据えながら「制度というものとある程度妥協していく」(p240)派であり、一方、小倉さんは、保育行政を例に挙げながら、制度や法律でどうこうするよりも「市場にまかせればいい」(p241)と述べている。以下、長いですが、重要ポイントなので長々と引用。

小倉:上野さんは、フェミニズムと議会制民主主義は本来は相容れないけれど、でもその議会制民主主義を使っていく、制度を改革していくという道もあるだろうと言ってるんですよね。

でも、具体的に法律が、女性を解放するのにどう貢献してくれた?保育行政なんか、失敗してるやないですか。あんなもの、ない方がましですよ。市場にまかせればいいと思う。

公立保育所があるからこそ、子供を5時までに迎えに行かないといけないんでしょう。24時間保育をやっている所もあるけれども、みんな補助金のない民間ですよね。公立は法律どおり運営されているわけで、法律の不備はみんな民間が負担してきたわけです。法律が一体何をしてくれたんです?(p241)


保育行政に関する上野さんの説明も秀逸。

上野:もちろん法律があるのはなにも女のためではない。保育行政も、もともとは家族政策でも女性政策でもなく、労働政策でした。母親労働力を使いたい、企業に優しい政策です。企業の本来の負担を公共が肩代わりする政策なんです。今日の政治が、自分たちの利益集団のために企業に優しい政策をやってきたのは、厳然たる事実です。(p242)


小倉さんの、この決めゼリフも素晴らしい。

小倉:官主導のフェミニズムということは、財界主導ということです。(p242)


以上から、小倉さんは、そもそも制度や法律には何の期待もしてない、一方、上野さんは制度改革も必要としながらも、「法学系の楽観的な正義感の持ち主や、法律で世の中を変えられると思っているようなフェミニストには違和感があります」(p242)と述べている。よって、お二人とも、明らかに行政主導フェミニズムには距離を置いているといえる。

また、小倉さんは、リベラル・フェミニズムが官製フェミニズムとなってしまうのは原理的に仕方がないものの、「フェミニズム理論としては私は与することはできない」(p253)。そして、今後、どのような対応をしていけばいいか、に関しては以下。

小倉:体制と一体化し、主流となったリベラル・フェミニズムを批判し続けること。大衆は使命を終えたものにでもついていくから。

地方の自治体の女性大学の受講生の論文集なんかを読んでいると、こんな講習会は止めてといいたくなる。フェミニズムを勉強するのはもう止めて、と。みんな間違ってるやん。

(p253-254)


とのこと。。私は、「地方の自治体の女性大学の受講生の論文集」を読んだことがないので、いったい、どういうふうに、どのくらい「間違ってる」のかわかりませんが、とにかく、どんな分野であれ、ある程度、ちゃんとした先生に習わないと、間違ってしまうことってよくありますので、まあ、とにかく「地方の自治体の女性大学」周辺は気をつけたほうがいいのかもしれませんね。。

ということで、とりあえず今回は以上です。
(・・・・・続く。)
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